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プレゼントの中身 [61~80]

何も手につかない時、というのは誰にでもあるのだらう。
他のことをしていても、いつの間にか「あの日の事」を考えているのだ。
あの日の思い出
あの時の僕様はちゃんとしていただらうか?
変なところはなかつただらうか?
僕様の態度は、あのワングに嫌な印象を与えはしなかつただらうか?

僕様は賢いワタメであるから、これ以上「あの日の事」を考えても意味がないのだと知つている。
だが変なのだ。
無意味なことは止めて、有意義なことを考えやうと試(こころ)みているのだが、いつの間にか「あの日の事」や、それだけではなくて「あの日の続き」を考えている自分に気付くのだ。
しかもそれを考えている時は、時間がとても早く流れるのだ。
困つた。
何か対策を立てねばなるまい。

奴からの荷物が届いたのは、島で対策の具体案を練つていた時である。
(ちなみに奴というのは僕様の飼い主のことである)
荷物に付いていた手紙にはかう書いてあつた。
夢中で考えていられるための材料を探してるのよね?
私が題材、あげるよー。
はいっ、この5つの箱(□□□□□)ね。
1日1つずつ開けて、感想をポエムパークの掲示板に書き込みに行くといいよ。
気を紛らわせるのに丁度いいこと請け合い!

・・・何のつもりなのだらうか。
僕様が奴に望んでいるのは、こんな箱(□□□□□)ではない。
奴があのワングのことを教えてくれれば、僕様がこんなことを考える必要もないのだ。
あの日の続きはいつになれば訪れるのだらうか。
早くくればいいと、僕様がこんなに望んでいることを奴は本当に知つているのだらうか。
だが、すぐにその時が来たなら、僕様はどうすれば良いのだらう。

ため息をついた。
また考えが「あの日の事」になつてしまつた。
僕様は軽く頭を振つて、奴から届いた箱を見た。
このまま堂々巡りの考えに浸り続けるよりは、まだ奴の言う通りにしておいた方がマシかもしれぬ。
それに奴に反抗すると「その時」が遅くなる可能性がある。
それは何よりも悪い。
 
 
 
僕様は奴の提案通りにするために出かけた。
ポエムパーク
 
 
 
5月20日。
一日目の書き込み
僕様は宝箱に何を期待して、何が足りないと感じたのだらう?
宝箱に入るやうな物で、僕様が欲しがつているものなどないのだ。
では何も要らないのに、足りないと思つているのだらうか?
それは変である。
矛盾しているやうに思う。
足りないのは何なのだらうか。
何も要らないと思うのは何故なのだらう。
29_4宝箱.jpg
足りないのは「欲求」なのだらうか?

5月21日。
二日目の書き込み
掲示板にはかういう風に書いたのだが、僕様は僕様の心が騒ぐ理由を知つているのだ。
29_6ビー玉.jpg
掲示板には書けないのだが、ここにならば僕様は書く。
それは・・・5ddを彷彿とさせる!
あぁ、5dd! 僕様の5dd!
5ddと僕様との思い出の日々!

5月22日。
三日目の書き込み
種を前にすると誰でも雄大になるのだらうか。
種は希望である。
そして希望とは、己の全てを捧げて悔いない存在でなければならぬ。
29_8芽が出たよ.jpg
花はどんな風に育つのだらうか。

5月23日。
四日目の書き込み
急いでいる者には、進むべき道が書いてある看板はとつても有意義なものなのだらう。
だがそれを「有意義」と言えるのは、その看板に事実が書いてあると仮定した場合にのみ当てはめることができやう。
29_10看板.jpg
もしもこの看板が事実と違うことを示していたならば?
果たして「その道がどこへ向つているのか充分に知つている者」でなければ看板は設置できぬのだらうか?

5月24日。
五日目の書き込み
価値のある人生の記録が記されるのを待てば良いのだらうか。
だがそれは誰の記録なのだらう?
29_12難しい本.jpg
きつとそれは僕様の知らない誰かの記録で、僕様はその記録に触れて、何を思うことになるのだらう。
 
 
 
うむ。
詩人の心得が皆無であつたとしても、僕様が立派なワタメであることに変わりはあるまい。
ポエムの出来栄えを考慮しなければ、奴の提案も悪いものではなかつたやうだ。
僕様は 僕様が好む、僕様の精神世界に しばし没頭できたのだから。
 
 
 
次のタイトルは「ありがとうの気持ち」
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ときめき [61~80]

春は出会いの季節と言われているさうだ。
僕様も新しい出会いを探しに出掛けた。
 
 
 
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5番目に着いた島は苺の島だつた。
白いごはんが島中にフワフワと浮いている。
いちご島での遭遇
見るからに平和で気持ちの良い島である。
その島に住んでいるラヴォクスがこちらに気付いて近寄つて来たので、僕様は素敵な島だと褒めた。
だけど私は不幸せなのよ
このラヴォクスは何を言つているのだらう。
こんな島に住んでいるリヴリーが不幸せなはずがあるまい。
バイオレコードを見ると、ストレスは0%だし、満腹度は100%だ。
飼い主との関係がこじれているわけではあるまい。
(ちなみに僕様はストレスが0%なことなど稀(まれ)であるし、満腹度が100%なことだつて数日に一度だけだ)
知り合いがいない?
ラヴォクスはこの島やその外見に全く似合わない、緩慢な動作で首を横に振つた。
沢山いるわ
理由は
ラヴォクスは俯いた。
それから話し始めた。
ラヴォクスの話を要約すると、こうだ。

住んでいる島はあくまで「飼い主の島」であつて、自分自身の島ではない。
そこに居候(いそうろう)させてもらつている状態は情けない。
自分は弱い存在で、一匹では食事も散歩も出来ず。
そんな自分の面倒を飼い主がチェツクしている。
常に監視されている。
疲れていても楽しそうに振舞わなければ申し訳なく。
とても重く、苦しい。

こういつた主旨の話であつた。
変な話だと思つた。
口調は淡々としており、聞いている時には筋道の通つた破綻のない言い分だと思つた。
僕様は返答に困つた。
具合の良い、このラヴォクスを上手く元気付けるための言葉が見つからなかつたのだ。
しかし何か言わねばならぬ。
それでもこの環境の中で
その時、僕様は気付いた。
このラヴォクスが自分を幸せでないと言う時、一瞬だがどこか誇らしげな様子を見せることに。
早くこの島から離れたい、さう思つた。
 
 
 
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その後に5回目の移動で着いた島は暗い島であつた。
お墓が何個も設置されていた。
おばけ島での遭遇
楽しい気分になり難い島である。
僕様は早々に立ち去らうとした。
だがそうする前に、その島に住んでいるカンボジャクがこちら気付いて近寄つて来たので、僕様はほぼ義務感から挨拶をした。
俺は幸せだ
このカンボジャクは、はつきりと、堂々と、自分を幸せ者だと言い切つた。
僕様は興味本位からバイオレコードを見た。
ストレスは94%で、満腹度は3%である。
それは僕様にとつて納得のいく数値ではない。
俄然(がぜん)興味が湧いた。
何が氏を
言いながら、僕様は少し失礼過ぎる物言いかもしれないと思つたのだが、もう口にしてしまつたのだから仕方あるまい。
僕様は大いに期待をして返答を待つた。
立派な島がある
それ以上の何を?
この言葉を聞いて、僕様はたちまちこのカンボジャクのことが好きになつた。

これから先、このカンボジャクと良い関係を築きたい。
僕様が悩みを持つた時には、それは何でもないちょつとした出来事なのだと思わせてくれるだらう。
あるいはこのカンボジャクが沈んでいる時、前向きな思考を取り戻すのに僕様が役に立つこともあるだらう。

出会いに感謝しつつ、僕様は交際を申し出た。
断る
この返答に、僕様は大いに驚いた。
知らず知らずの内に、このカンボジャクの気に障ることをしたのだらうか?
邪心のない友情を拒絶されるほどの失態を犯したのだらうか?
考え直して
俺は強いから
そう言つた時のカンボジャクの姿は印象的で、誰かからの説得など全く受け付けないぞという目をしていた。
僕様は当然の疑問を口にした。
では友リヴは一匹もいないのか、自分を理解しやうと努めてくれる者はいないのか、と。
強い強がり
カンボジャクは顔を赤くして、そう怒鳴つた。
その態度はカンボジャクのどんな言葉よりも一番、真実を表しているやうに思えた。
僕様は何も言えなかつた。
言つてはいけないのだと思つた。
急にこの島が、とても居心地の良くない島に思えた。
早くこの島から離れたい、さう思つた。
 
 
 
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次の5回目で着いた島はこれといつた特徴のない島であつた。
野原での遭遇
この時の僕様は最初から警戒をしていた。
上に書いたやうな事情があつたのだから、警戒はしごく最もな事と理解してもらえるだらう。
島に住むワングと目が合つて、ワングが近寄つて来た。
如何なる状況にあつても挨拶だけはせねばなるまい。
私の島へようこそ
全身の力が抜けた やうに思えた。
改めて考えるとこれが『一般的な挨拶』と言うものだらう。
しかし僕様は久しくこの挨拶から離れていたやうな気分だつたのだ。
何か出来ることは
思いがけない、穏やかで優しい物言いに嬉しくなつて僕様は頷いた。
何でもおつしゃつて下さい、とそのワングは言つた。
僕様にはそのワングに頼めるやうな、これといつた望みがなかつた。
ただワングが頷かずにはいられないやうな口調で訊ねるから頷いただけなのだ。
少し考えてから、しばらくこの島で休ませて欲しい、と言つた。
そのワングは快(こころよ)く承諾した。
では私も一緒に休みましょう、隣で眠つても良いですか、と。
もちろん僕様は頷いた。
一緒におやすみ
zzzzz
 
浅い眠りから覚めて目を開けると、間近にワングの顔があつた。
丸くて愛らしい目が今は閉じられていて、優しげな印象がいつそう際立つていた。
僕様は温かい気持ちになつて、再び目を閉じた。
もつと長い間こうしていたい、と思いながら。
 
 
 
次に目が覚めた時、僕様は自分の島に戻つていた。
白鳥島へ戻った
まどろんでいる内に自動帰島してしまつたのだらう。
残念である。
あのワングと今後の交流を約束したかつたのだが・・・。

春は出会いの季節と言われているさうだ。
途中までは違つていたが、今はウキウキわくわくとした気分である。
 
 
 
次のタイトルは「プレゼントの中身」
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花束持つて [61~80]

あの島へ行つてみやう。
花束を持つて。

正直なところ、僕様はこれからやらうとしていることが特別に良い行動であるとは思つていない。
そもそも僕様は、我こそはと咲き誇るカラフルな花よりも、静かにたたずむ観葉植物を好む性質の持ち主なのだから。
しかし僕様は賢いワタメ。
他者の意見に耳を貸す立派なワタメなのだ。

前回の記事に、幾人からかそうすると良いといつた意味のコメントをもらつた。
だからそうしてみやうと思うのである。

あの島というのは、あの小さいピグミーのいる島のことである。
ちなみに小さいピグミーというのは奴の脳内フレンドのことであり、
奴というのは僕様の飼い主のことである。

僕様は行つた。

小さいピグミーは在島中であつた。
やあ。
あっ! Lood様だ! いらっしゃいませ!
もう充分だ。
僕様はさう思つた。
小さいピグミーがいつも通りの様子であつたからである。

前回、この小さいピグミーの様子がおかしかつたので気になつていたのだ。
それで今回 様子を見に来たのだから、元気な姿を確認出来て目的は果たしたと言えやう。
Lood様が来て下さるなんて嬉しいです。えへへ。
僕様の内には長居をする「理由」は見当らないのだが、もうしばらくここに居ても良からう、とも思う。
花を持つて来たのだ。
え? お花?
僕様はあらかじめ用意しておいた呪文を唱えた。

/gift

こうすれば良い、と幾人かが教えてくれた。
僕様はその通りにやつたのだ。
わあ、お花だ! 私のために出してくれたんですか?
うむ、さうだ。
わーい! ありがとうございます!
順風満帆。
取り巻く風たちは皆心地よく、帆を目一杯張つてこのまま進めば きつとどこへでも行くことが出来るのだらう。

どこまでも。

だが あいにく風は吹いていないし、僕様は帆を持つておらぬ。
しかも ここは海の上ではないからその二つがあつたとしても、どこへも行けぬのだ。
しかし だからといつてそれがどうしたと言うのだらうか。
どうかしましたか? Lood様?
うむ、水路と情操の関連性について考えていたのだ。
え? む、難しいです。私、分からないです。
分からずとも良い。
この僕様でも考え中の事なのだから、小さいピグミーが分からないのは当然の事だらう。
・・・・・・。
小さいピグミーは黙つた。

既視感が僕様を過去へと誘おうとするのを振り払い、僕様は急ぎ気味に言つた。
訊きたいことがあるのだ。
まだ何も訊いていないのに、小さいピグミーは意外なことを訊かれて困つているという面持ちで首を傾げた。
僕様は直観的に「早く続きを言うべきだ」と思つた。
最後に僕様の島へ来た時のことを覚えているだらうか?
はい・・・覚えてます。
僕様は何か失礼なことをしたのだらうか?
え・・・?
僕様の考える誠実と、氏の考える誠実との間には距離があるやうに思うのだ。
さう思うのだ。
え?
心当たりは無いのだが、僕様の言動の中に非礼を感じる部分があつたのなら謝罪をせねばならぬだらうし、今後のためにどの辺りが非礼にあたつたのかを訊いておかねばならぬ。
小さいピグミーは相変わらず困つた顔で僕様を見ていた。
何をそう困つているのだらう。
口にするのも憚(はばか)られるほどの非礼であつたのだらうか。
言えぬか?
えっと、別に非礼だなんて思ってないです。
では何故黙るのだ? どこか・・・お腹でも痛いのか?
小さいピグミーは笑つた。
困つている顔よりもずつと良い顔だと思つた。
はい! お腹が痛かったんですよ、Lood様。
さうなのか?
うん! だけどもう大丈夫です!
さうか。

どうにも しつくりしない。
何か違うやうな気がする。
だが、花の中で遊ぶ小さいピグミーを見ていると、はつきりさせなくとも良いやうに思えた。

それでも今後このやうなことが起こらないために、言つて置かねばならぬことがある。
どうしたんですか?
言いたいことがある。
はい、何ですか?
僕様は氏に対して 常に誠実であることを約束しやう。
僕様の言動が不快感を与えるものである場合でも、氏に対しての潔白は揺るがないものと心得るが良い。
え? Lood様のことを信じてればいいんですか?
うむ、さうだ。
はいっ、分かりました!
うむ、さうか。
これで大丈夫だ。

こうして半年前の関係が、半年後も続いていることだらう。
 
 
 
次のタイトルは「ときめき」


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